<バンコク>受験クラスお稽古
2015年6月23日
5月25日(月曜日)~5月28日(木曜日)の4日間、現在バンコク在住で日本の小学校を受験予定の子ども達向けの講習をしました。初めてのお友達でのスタートでしたが、会場となったキッズルームの楽しい雰囲気に緊張もとけ、早速パターンブロックでそれぞれが思い通りに好きなものを作りだしました。きれいな幾何学模様、街や海底を作る子もいました。
気持ちがほぐれたところで、今度はみんなで協力して何かを作り上げていきます。最初は上手にコミュニケーションが取れなくても、毎日同じ仲間と活動するうちに、同じブロックを使っていても日に日に世界が広がっていきました。ブロックをただ並べるだけでなく、やればやるほど、頭をフルに使っていろいろなものを作り上げていきます。日毎にお友達と協力する姿が増え、子どもの力の凄さを感じました。1日目は一つのことができるとすぐに動いてしまっていた子ども達も、徐々に一つのことにじっくり取り組むことを覚えます。言われたことを確認しながらの作業だったのが、自分で考えて行動できるようになりました。
海外にいると日本での生活以上に様々な経験ができ、日本の幼稚園、インターナショナルの幼稚園と、通っている幼稚園によって同じ地域で暮らしていても様々な生活習慣があります。それぞれの生活習慣から学べることには限度があるので、違う環境で暮らす場合の考え方や行動パターンを知らずにいることが多々あるようです。今回の講習でも初めは戸惑うことがたくさんありました。自分が出来たら席を離れて自分本位の行動をとったり、遊んでよいのではないことも学びました。これはあと数年後に通う学校生活での土台です。授業中に歩きまわる、集団行動が出来ないという話を聞きますが、こういったことは1年生になるから出来るようになるのではなく、小さい頃から少しずついろいろな行動ができる環境のなかで体得していくもの、大人はその環境を与えてあげなければなりません。
一つの作業が終わる度に机の上をきれいに片付けなくてはいけないことも覚えました。
身の回りが整理できていれば、スムーズに作業できます。生活の中でも整理整頓ができていれば、頭の中も上手に整理整頓ができます。シンプルなことを覚えることが、自然に創意工夫に発展していくのです。
子ども達は遊びの中から学びます。子どもの力をもっともっと引き出すためには、まずは「なるほど」「おもしろい!」などの気持ちを引き出さなくてはいけません。子ども達が持つ本来の可能性を引き出すことは、心と脳を育てることです。これは決して難しいことではありません。子ども達は、やりたい!知りたい!できた!という気持ちが育てば、とてもしっかりと集中して物事に取り組みます。どんなことにも前向きに取り組む姿がたくさん見られるようになるのです。
お母様方には、とてもシンプルで「うちの子はまずちゃんとできているでしょう!」と思っていることも、一つ一つ確認していただくことによって、何が大切なのかがわかることを、少しご理解いただけたのではないでしょうか。受験だから、何かスペシャルなことをするのではありません。どこにいても年相応にきちんと丁寧に生活する中で、自分で考えて行動し、「何だろう?」「どうして?」などの気持ちがしっかりと育つのです。毎日毎日を子どもらしくたくさん遊び、自分の身体を自由自在に使えるようにしていくことで、子どもは自分の足で一歩一歩進んでいくことができるようになります。
毎日象の塗り絵をしました。初日は何も言わずに、その後はその日その日にテーマを与えました。背景や象のことなど、同じ象の塗り絵でも条件を与えることによって全く違う絵に仕上がります。今の世の中はたくさんの情報が溢れていて、小さい子ども達もいろいろな体験や経験を積める環境です。これはとても素敵なことですが、素敵なことにするためにも忘れてはいけないことがあると思います。それは、何もかもがつまみ食いにならないことです。先ほどの塗り絵のように、同じことの繰り返しが子ども達には必要です。象の絵のプリントを次の日に渡すと「もう昨日やったよ」と何人もの子どもが言いました。「あ、そうだったね、先生忘れちゃった!ごめん、ごめん、でもせっかく準備したから、今日は青い空や、象さんがどこかにお散歩しているように描いてくれるかな?」なんて会話も楽しみながら、取り掛かってもらいました。ただただやらせようと思っても、子どもに興味がなかったり、やらされていると思っていたら決して楽しい時間にはなりません。少しでも楽しめるきっかけの言葉がけをすれば、同じ材料を使っても全く違った展開になります。これはお料理ととても似ていると思います。同じ食材を使っても、切り方や調理法で出来上がりは全く違うものを味わえるのです。是非小さい子ども達には、たくさんの種類の材料を与えるのではなく、同じ材料をいろいろな形で与えてみてはどうでしょうか?
4日目は、夕焼け空の象さんに仕上げてもらいました。お稽古をしているお部屋からの景色もちょうど日没の時分であり、最初はただ描いていた塗り絵も、お天気の話をしたり、バンコクの様子を話してくれたり、こちらが導くのではなく、子ども達の方から積極的にクラスを進めていくような会話が聞こえてくるようになりました。「こっちはもっと木を森みたいにしようかな?」「僕はサファリに行ったときみたいに描いたよ。」「すごい雨が降った後に、虹がでるんだよ!」などそれぞれの持っている知識を一生懸命に言葉で表し、また絵で表現し、そしてその様子をジェスチャーで表している様子は、子どもらしく生き生きとしていました。大人はどうしても教えてあげようと思ってしまいますが、子ども達はスポンジのようにどんなことも吸収していきます。無理やり教え込むのではなく、たくさんのことをできるだけ生活の中で教えてあげると良いと思っています。
お家や幼稚園、街の中でも、その場その場でお約束やルールがあることも、子ども達は覚えていかなくてはいけません。何かを我慢することも覚えてほしいことです。小さな子どもの世界でも、繰り返しやればできるようになることがたくさんあります。
道具の与え方についても常々考えさせらます。子どもにハサミを与えるとき、危ないから年齢が上がるまで切れるハサミを与えないのが良いのでしょうか?小さい頃から切りやすいハサミを与えることで、切れ味という面白さを与えるのが良いのでしょうか?考え方によるのかもしれませんが、子育てをしてく時は、様々な角度からやってみることも大切なように思います。ハサミに関しては、切れるハサミで切る醍醐味を覚え、「できた!」を感じさせたいと考えています。ただこの時は、危険がないようにお約束を守ることや、大人が一緒にいて安全に留意しなければいけません。
まだ小さいから聞き分けられない!と、始めから大人の物差しで決めてしまわず、是非やらせてみてください。そのためには準備をしたり、一緒にそばにいることが煩わしいかもしれませんが、逆に言えばその時こそが子どもと同じ時間をともにする大切な時間なのです。日本のお稽古でも、1歳半くらいの子ども達も切れるハサミでお稽古をしています。ハサミの音を楽しんだり、切れた紙で遊んだりとても楽しい時間です。そして何よりも、自分で成長していく手応えを感じています。2歳の子達は、今では大人顔負けのようにきれいに線を切ることができています。
クレヨンもある年齢になると、たくさんの色を持ちたがります。それも楽しみの一つですが、初めてクレヨンを与えるときには、3色や5色程度にしましょう。色を教えてあげる時、まずは「青」と教え、「藍色」「紺色」などとは教えませんね。それと同じことです。子どもに色について興味を持たせるためにも、基本をしっかりと教えてあげてはどうでしょう。こんな果物の色を作りたいな!と思えば、クレヨンを重ね塗りして色を作るかもしれません。たまたま重なってきれいな色が出来たことを発見するかもしれません。そんな時間こそが、好奇心や向上心を育むきっかけになります。12色のクレヨンがあれば、様々なことができます。たくさんのクレヨンを持って描いている子が12色のクレヨンで描いてみると、いつもある色がないので、絵が描けなくなってしまうことがあります。少ないものから増やすことは便利になり不自由を感じませんが、多いものが少なくなってしまうと不自由を感じます。そして、困ってしまいます。これは生活にも置き換えられると思います。子育て中は是非、まずはシンプルに、少ないものの中で生活してみてください。きっとたくさんの創意工夫が生まれ、楽しみも増えます。お洋服だって、いろいろな着回しをする楽しみ、センスが磨かれ、何よりもお気に入りものができるでしょう。絵本も、食器も・・・。そして何よりも子ども達が、ものを大切にするようになります。
ものが溢れていると、何かと邪魔になってしまうことが多いと思います。子ども達は今、まだまだ色のつかない白いキャンパスをたくさん持っています。その白いキャンパスに自由に色が付けられるように、小さい時はなるべくその白をたくさん残しておいてあげてください。
この4日で、子ども達を通じて環境や道具と子育てについてたくさん考える機会がありました。「受験」も、今はたくさんの情報が溢れています。日本にいれば何でも手に入りますし、海外にいても少なからず、いろいろなことをキャッチできると思います。「受験」のためにするのではなく、まずは子ども達が年相応に成長できる環境を作ってあげてはどうでしょうか?心身ともに元気な子ども達、たくさんの可能性の種をしっかりとした土壌にまいてみませんか?温室の中の土壌ではなく、大雨が降っても強い風が吹いても、しっかりとした根がはれる土壌であれば、世界に一つだけの花を咲かせられと思います。
4日間、たくさんの繰り返しをしました。そして、たった4日でしたが、たくさんの学びがありました。たくさん自分で、行動ができました。そして、素敵な仲間ができました。その仲間たちの顔は、とても輝いています。