<バンコク>ドラえもんCAMP~お稽古編~

2015年9月24日

2015年9月14日(月)~9月17日(木)

昨日会った子ども達や久しぶりに会う子が、お母様の影から私を出迎えてくれました。今日から4日間の日程でドラえもん講習が始まります。日本と違ってバス通学の子が大半を占めているバンコク。天候や渋滞によっては片道約1時間以上かかる子どもも珍しくないようです。最初はママとお別れをするのがつらい子もいましたが、お兄さんやお姉さんが「泣いたら楽しくないよ!しっかりやらないとママがお迎えに来てくれないよ!」。こんなやり取りでスタートしました。
まずはドラえもんの道具をつくります。どこにでもあるプラスティックの容器とストロー、輪ゴムを使っての作業です。とても単純な工作なのですが、2つの容器をセロテープでとめたり、輪つなぎをしたり・・・どれもはじめてのことばかり。バンコクに限らず最近では、幼稚園の工作では先生が随分準備をしてくださる傾向にあるなど、自分で説明を聞いて行動をすることが少なく、いわゆる手取り足取りの状態が多いように感じます。また、多種多様な道具は一見便利なようでいて子どもの手先教育を妨げるため、道具の取捨選択をしなければいけないと感じています。はじめてだって、できなくたって、やると決めた事はどんな事をしてもやり遂げます。カップにセロテープを貼る作業だけでも、手助けをしないので一苦労です。でもこの時間が、テープを貼るという作業にとどまらず、とても大切です。そうこうしているうちに、完成間近になってきた子もいます。輪つなぎだって!やっと出来た輪ゴムをカップにつけ、にこにこしてかぶってみたら、あれれ?なんて。ストローにも向きがあり、口にくわえるには、どちらかな?どの位置に付けたらよいかも考えなくてはいけません。こんな感じでの作業ですから沢山の苦労をしてできあがり、子ども達には愛着が湧いてきます。今日のお稽古の間中水中眼鏡姿の子さえいました。

水中眼鏡が出来れば、海の世界をつくらなければ・・・。子ども達だって、何かをのぞいてみたくなります。子ども達が色々な話をしはじめます。輪ゴムをつないでみたら魚に見えました。画用紙に輪ゴムを貼って目を描いたら、可愛いお魚に変身。楽しそうにどんどん作る子や、モールを使って海藻をつくってみたり、カニをつくってみたり、水中眼鏡をかけたら本当に海の世界になりました。「もしかしたら、水中眼鏡をかけたら蝶の世界にも連れて行ってくれるかな?(この間のプチ遠足でバタフライ館にいったので)」なんて、色々なお話をしてみました。勿論子育てのときには、正解を教えなくてはいけません。でもまだまだ何も知らない子ども達、色々な言葉のシャワーをあびせることも大切です。
一昔はよく、絵描き歌をやりました。最近ではあまり馴染みがなくなっていますが、「まるかいて、ちょん まるかいて ちょん・・・」と歌ってみます。これだけのフレーズですが、子ども達の描く「まるかいて、ちょん」は、本当に大人では想像ができないものです。これだけでも十分一緒に遊べてしまいますね。
集中力を養うために、毎日置き換えをやりました。シール貼りは、初日は何だかわからなかった事も早くきれいにやることを覚えたり、日毎に作業が上手にできるようになっていきます。3日目からは用紙の裏にシールで絵も描いてみました。大きな丸を描いてあげたろところに、「お隣同士が同じ色にならないように張ってみて!」なんて言葉がけをしました。けれどもまだまだお話が上手に聴けません。「お隣同士が」の「が」の助詞の使い方がわからないこともあります。これは脱ワンワードを生活にしっかり取り入れないかぎり、年齢が上がれば分かるようになるのではなく、なんとなく日本語を理解して、なんとなく話していては解決できません。
小さい頃はお母様方が手助けして差し上げられますが、小学校に行ったらどうなるでしょうか。お友達同士のコミュニケーションが上手にできなかったり、先生が出してくださる問題の意味を理解できなかったりして、ここで算数が苦手な子ども予備軍になります。問題をそのお子さんが分かるようにかいつまんでいってあげれば出来ますが、その作業がなければ、何をどうしたらよいかが分からなくなってしまうのです。

今はお子様とご一緒にいる時間がたくさんあり、たっぷりお話をしてあげられるハッピータイムです。脱ワンワードを是非実行してみてください。きっと、子ども達に沢山の世界が広がると思います。一概には言えませんが、同じ2歳児でもとても会話を楽しんで毎日を過ごしている子達もいます。この子達は何でも興味を持ったり好奇心、向上心を持ち、子どもらしい行動が出来るようになって行きます。お話が上手でないお子さんでも、話さないから何も与えないのではなく、言葉のシャワーを浴びせておくと、ある日突然大人顔負けのお話をするかもしれません。
又、幼児語はNGです。これも自然に直ったり、大きくなったから標準語が話せるのではありません。小さいからと思って使っている幼児語こそ、一回癖がついてしまうとその癖をとるのが大変ですので、正しい言葉、きれいな日本語をしっかり教えてあげてください。

工作をするときに感じたのは、道具の選び方です。日本のお教室だとセロテープなどもこちらでシンプルなものを準備してあります。こちらでは、各自に持って来ていただきました。お道具の忘れ物はありませんでしたが、子ども達は持ってきた道具を上手に使えませんでした。お母様方は子ども達の為に道具をどのように選ばれるでしょうか?言われた道具は準備をされますが、使い勝手を考えてお選びになるでしょうか?おそらく楽に使える優れものには、すぐ飛びつかれると思いますが、シンプルで使いやすい、どこにでもあるようなものを使わせるように心がけておられるでしょうか。ぜひ、お母様がまず、道具の機能性がどのようであるかを考えてから選んでください。お箸でもエジソンのお箸を使えば最初は上手に使えるように見えるかもしれませんが、大人の使うようなお箸を最初から使わせてみてください。時間はかかるかもしれませんが、その時間こそがいろいろな知恵を生み、手先を動かすトレーニングになると思います。
お母様が是非、このような時間を大切にしてくだされば、今何が子ども達に必要なのか、企業ベースに踊らされずに、真の子育てをすることができるかもしれません。

コピーもとても時短になりますが、子育てをしているときは、面倒でも一緒になって書いてあげたり、消してあげたりする作業をすることで、子どものことが沢山見えてくると思います。小学生になってから「字はきれいに書きなさい、お手本どおりに!」という事を聞きますが、小さい時にはそのような事は言わずに上手と言ってほめていたことを、小学生になったから重箱の隅をつつくように言われても、子ども達だって腑に落ちません。
子ども達はこのように腑に落ちない事を言われたり、理不尽な事を感じて過ごす事が少なくないように思います。子どもは小さいからと思うお母様方の物差しで接するのではなく、是非同じ子どもの視点に立って、色々一緒に楽しんでください

この4日間で、身近なものを使って手先の作業を沢山行ないました。同じ輪ゴムでも色々な使い方があることなど、毎日同じ道具を色々な方法で使う事に子ども達はとても興味を持っていました。沢山のドラえもんも生まれました。同じ材料を使っても、それぞれの子どもに個性があるように、出来上がった作品には違う味わいがあります。自分の納得のいくドラえもんになるように作業をしていくうちに「どのように貼ったらよいか?」など、お友達とのやりとりに発展していきました。試行錯誤、苦労して作ったからこそ愛着がわいてくるようで、眺めてはニヤニヤしている姿は本当に愛らしいです。

4日間のうちには、前日やった事を復習してみると、理解したと思っていたことがまだできていないことに気がつきます。そういったときは何度も何度も繰り返しました。そして知らないうちに自ら練習している姿も見えてきて、「出来た!」の笑顔も増えていきました。
毎日やった置き換えも4日目には要領を得て、どんな指示があるのかをしっかり聴いています。ただただやるのではなく、どんな時も初心を忘れずに丁寧に向かい合っていけることが大切です。この一つをとっても、繰り返しを続けると置き換えが出来るようになるだけではなく、他のことにも種をまく事ができるでしょう。
幼児期の目標やハードルの高さは様々でも、自分でしっかり繰り返す事をおぼえ、挑戦することや失敗して悔しさを覚えることの大切さは共通です。時間はかかっても単に答えだけを得るのではなく、失敗後に試行錯誤して答えの手応えを感じることこそ、本当の「できた!」につながっていくと思います。
昨今は子ども達が日々の生活の中でやる事がとても増え、習い事なども種類が多くなっているようです。色々な体験をして色々な事に興味を持ってほしいと願う、お子様の夢を応援したい御両親のお気持ちもわかりますが、まずは1つのことを、それもお母様が先生になって教えてあげること続けてみてください。この1つが身についてから、次の挑戦をさせてあげてください。時間はかかっているようですが、きっと子ども達はやる気を増して取り組むことができると思います。毎日とても忙しくお稽古に通う子ども達。「子どもの為に」とやっていることが、なんだか逆効果なのでは?と考えさせられることが毎年加速化しているようです。ちょっと立ち止まり、つまみ食いになっていないかを反すうしてみてほしいと思います。この4日間の為に他のお稽古をお休みして時間をつくってくださったのかもしれませんが、毎日毎日続けて来てくださったからこそ、目に見えて子ども達全員の成長が見えました。

4日目は、この講習の集大成で子ども達がドラえもんに変身しました。毎日やってきた作業を全部取り入れてのドラえもん!失敗もたくさんありました。それも私が指摘して、失敗と気付くのではなく、自分であれ?と気が付く事が出来、そしてそれをよりよいものに直す作業さえ出来るようになりました。出来あがって変身した子ども達、なんと輝いて可愛いのでしょう。お友達どうしほめ合い、お友達がより良くなるようにアドバイスする姿まで見ることが出来ました。
最終日のおやつは、お母様手作りのスイートポテト!箱を開けると、そこにはお稽古でやったモールのラッピングなど、お子様と一緒につくってくださったお母様の優しさや愛情がいっぱいつまっていて、本当に本当に素敵なおやつになりました。美味しいお菓子、日本のお菓子と何でも手軽に手に入りますが、このようにお母様のひと手間を加えていただくと(きっとお忙しいお母様にとっては大変かもしれませんが)お子様との絆が深まるのだとひしひしと感じました。こんな愛情がきっとお子様の土壌をつくり、しっかりと根をはらせるのだと思います。

子ども達は遊びを通じて沢山学びました。そして私も子ども達やお母様方を通じて沢山学ぶ事が出来ました。子ども達から「ありがとう!」をもらうとき、私自身が感謝の気持ちでいっぱいです。子ども達の可愛いお手紙も宝物です。「今度はいつ会える?」「バンコクにずっといたら?」などの声が私の背中を押してくれています。

取捨選択を沢山しなければいけない子育て。どれもが正解かもしれませんが、「お子様の為に」が空回りしないように、是非時には立ち止まってお子様の将来を見据えてほしいと思います。
次回はもっともっと子ども達が輝いていく沢山の工夫をもって、バンコクに降り立ちたいと思います。

磯邊季里 @ 2015年09月24日 14:51 コメント: (0)

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