<子育てセミナー> 玉川テラス~気づきと学びの子育て法~
2016年1月24日
「遊び」とは生きる力・学ぶ力
1月18日月曜日、雪による交通機関の混乱があるなか、玉川テラスで子育てセミナーを行いました。ちょうど朝の通勤・通学ラッシュの時間帯に雪の影響が出たため、参加された方もみなさまいつも通りの外出とはいかず、大変な思いをされた方もいらっしゃいました。玉川テラスへ来る途中、制服を着た小学生の姿を見かけました。学校によっては休校にしたところもあったようですが、遠方から通学している場合など、その連絡を受ける前に家を出るケースもあることでしょう。大人も交通の乱れに混乱するなか、思わぬ混雑に遭遇し不安を感じた子どもがいたことと思います。今回はまだ気象による交通の乱れで済みましたが、これが地震やテロだったら?比べものにならないほどの危険が伴うかもしれません。小学校受験をし電車通学をするということを改めて考えさせられます。いつもと違うルートを試してみる、それも一度試して安心してはいけません。子どもにとっては一度くらいではいざというときに活用できないと思います。いつも通りでない場合を想定してそれに備える、親が一緒に準備してあげなければならないとても大切なことを、暖冬のなかの雪が思い出させてくれた朝でした。
さて、本日のテーマは「遊び」です。これは実は今年の活動テーマです。小学校受験の準備をしていると、年長ともなると子どもが「勉強」という言葉を使い始めます。私はそれはまだ使わなくて良いと考えています。勉強という言葉には、子どもはいずれ拒否反応を示しかねません。勉強ではなく「学び」ととらえてほしいのです。遊びのなかでクイズをしたり、工夫をしたりすることから学ぶことはとてもたくさんあります。小学校受験のためだけの勉強、小学生になってからの「のびのびのはき違え」はとても怖いものです。自分で考える力を育てることが何より大切です。自分で考える力は、生きるために何かをすることを楽しく感じさせ、つまりは生きる力を育むことにつながります。自分で考える力、豊かに生きていく力を育てるような学びは、遊びの中からたくさん得られることを、お母様方にぜひ再確認してほしいと思います。
では「遊び」とは?改めて考えてみるとどうでしょう。お子さんとは遊んでいますか?週末は遊んでいたとしても、平日は?公園などに連れていき、子どもが遊んでいるそばで携帯電話を操作していませんか?それでは一緒に遊んだことにはなりません。9歳までは、お母様方は子どもと一緒にいるときは便利なものと離れていてほしいと思っています。昔ながらのシンプルなボードゲームやカードゲームで子どもと一緒に遊ぶのがおすすめです。ゲームのルールを守ることは社会のルールを守ることにつながります。特別な設備のあるところではなく、家のご近所の公園で良いので、バーチャルではなく本物の自然のなかで遊びを探し遊びを作っていくと、「自分で考える力」「生きる力」という点で子どもが変わってくると思います。
子ども達に「昨日遊んだ?」と聞くと、「忙しくて何もできなかった」という答えが返って来ることがなんと多いのでしょう。今の時代、特に都会には子どもに足りない3つの「間」があるといわれています。この3つとは何でしょう?「時間」「空間「仲間」です。子どものためを思って、様々なお稽古をさせるご家庭があります。週末ともなれば一日に3つも4つもお稽古の予定があるケースも!これでは結果的に、どのお稽古もつまみ食いをするようで、集中力を養う妨げにもなります。時間的に余裕がなくなれば学校の勉強もおろそかになりがちで、ゆっくりと自分で深く考え復習できなくなってしまいます。
都心では公園が少なくなってきています。子どもが外で安心して思い切り遊べる環境について、親が考え整えてあげる必要がある時代になったのです。公園の減少は仲間と遊ぶ機会も奪っています。アメリカ・テキサス州出身のロバート・フルガムの著作に「人生に必要な知恵は、すべて幼稚園の砂場で学んだ!」というものがあります。人間がどう生き振る舞うべきかを、幼稚園の砂場で他者とかかわりながら遊ぶことで学んだというのです。学びの土台となる大切な砂場遊びを、衛生上の理由で毛嫌いする親もいると聞きますが、汚れれば洗えばよい、そこにも親子の学びの機会があるととらえ、ぜひ砂場に子どもを入れてほしいと思います。
昔ながらのシンプルな遊び、身近な公園のなかで遊びを探し作っていく過程、砂場で他者とのかかわりのなかで何かをつくっていく過程には、「遊びが心を育てる」という恵みであふれています。例えば積み木遊びは、考え、工夫し、イメージを表現することにつながります。ままごと遊びやごっこ遊びでは日頃見聞きしているものを体現し、他者の立場を想像し理解することを助けます。ぬいぐるみ遊びでもコミュニケーション力を育みますし、ジェスチャーごっこなど表現力を育てる遊びもあります。折り紙で静かに遊ぶこともあるでしょう。ゆっくりとくつろぎ、リラックスできる遊びは、子どもにとってとても大切な時間をもたらしてくれます。
親の立場として気を付けたいのは、まだまだ子どもらしい遊びをしていてもよい時期に「もうそんな遊びは赤ちゃんのようだ」と取り上げてしまわないことです。小学生にもなると学級のなかではお兄さんお姉さんを気取りたいためか、昔ながらの遊びをばかにする風潮が出てくるかもしれません。子どもはそういったことに敏感です。でもご家庭では、先を急ぐ必要はまったくないと思います。ここで例にあげた遊びはいずれも想像力を育て表現する意欲を育むもの、これらで遊ぶ時期を足早に通り過ぎるのはもったいないのです。
コミュニケーション力や想像力を育て、表現する意欲を育てる遊びは、つまりは心を育てるものと言えます。子どもの成長を願うとき、心身のバランスが大切と誰もが思うことでしょう。身体の成長は目に見えてわかります。頭脳の成長もまだわかりやすいですが、心の成長は見えにくく、わかりにくいものです。日本語では「心」と一言でも、英語なら「heart, mind, spirit」などがあり、いろいろな側面をもつ奥深いものであることに気付かされます。心は人が生きていくうえで背骨のように大切なもの。その心が育っているかをよく見てあげるために、親子で一緒に遊ぶことがとても大切なのです。「遊んであげている」という意識ではなく、子どもの立場になって、子どものをことをよく見て、子どもが発信していることをよく聴くことで、子どもの成長にとって重要な思いやりの気持ちやコミュニケーション力、聴く力と話す力が備わっていくと思います。こういった子どもは仲間を得、仲間で何かを大切にしていくことができ、一人で得られるよりずっと豊かな人生を生きていくことができるでしょう。
小学校受験ということを考えたとき、お試験=知識と思われがちですが、実は今日お話ししたような、子どもらしい遊びのなかで自然に学び、他者とのかかわりの中で自分を生かしていけるような子どもであることが大切になってくることも付け加えておきましょう。
子育てに迷いや悩みは付きもの。でも子どもは自然に遊び、学んで育つ力を持っています。遊びながら生きるための全てを学んでいるのだから、親は子どもと一緒に遊んでいれは大丈夫です!先を急がず、安心して共に楽しみ、わくわくしてほしいと願っています。