<バンコク> 子育てセミナー「遊ぶことは生きる力・学ぶ力」
2016年3月8日
2月29日(月)タイ在住の画家、あべきょうこ先生のアトリエをお借りして、子育てセミナーを行いました。9時半ごろにセミナーに参加される方々が集まって来られましたが、準備のお手伝いのために、自らすすんで早く来てくださる方もいらっしゃいました。きょうこ先生のお嬢さんが、お雛様にちなんだ3色のメレンゲを朝から焼いてくださっています。アトリエのそばにうさぎ小屋があり、かわいらしいたくさんのうさぎが出迎えてくれ、まるでうさぎカフェでセミナーをすることができるようでした。きょうこ先生やお母様方がお茶の準備をしてくださいます。素敵なセミナー開催のお知らせもきょうこ先生が描いてくださりました。お雛様が飾られた、日本にいるかのようなすてきなアトリエで、ほっこりとする雰囲気のなか、セミナーがはじまりました。お忙しいきょうこ先生もお話を聞いてくださっています。
さて、今回のセミナーは同じ内容で日本で行ったことがあるものです。子育てセミナーのレジュメはいつも「このセミナーを受けたあと、どのようになっていたいですか?」という問いからはじめていますが、今回はそれに加えて「遊ぶとは何ですか?バンコクでの遊びはどんなことをしていますか?」と問いを投げかけてセミナーを始めました。小さなお子さんを連れての参加者がいらっしゃり、はじめはなかなか落ち着いて話を聞けない状況でした。けれども、「親は子どもに何をしなければならないのか」という話を聞かれた後は、お子さんを遊ばせながら(恭子先生がそっとの粘土を差し出し、、プレゼントしてくださいました。)話を聞くことができました。ご自身が心地よい環境を作るためにも、一工夫することで同じ時間が変わっていくものです。
遊ぶことがどれほど大切か、日本ではなくバンコクならではの遊びを、パターンブロックのイベントやドラえもんキャンプで行ったサファリ・ワールド、藤城先生のリトミック教室での実例を交えてお話ししました。また、学ばせようとすると親子とも大変になってしまうもの。遊びでなら、一緒に遊び楽しむ中で得られるものが増えていきます。
今回のイベントで行ったかけっこ教室では、会場となったきれいな公園に子ども達の笑顔が映えて、輝いていました。かけっこだけではなく五感磨きもし、草の香り、風のさわやかさ、噴水の音などを楽しみます。すばらしい副産物です。バンコクならではの遊びとしては、例えばとても身近なものに「じゃんけん」があります。日本のじゃんけんとは少し違うその土地のじゃんけんに目を向ければ、日本で暮らしていては知り得ない遊びを親子で簡単に取り入れることができるでしょう。他にも、せっかくインターナショナルな国、タイならではのことに目を向け、もっと楽しんでみましょう。
食べ物のなかで果物を見てみると、日本では珍しいドラゴンフルーツがここでは普通に手に入ります。ただ食べる以外にも手で剥いてみると意外に簡単に剥け、切ってみるとどの断面も同じに見えるなど、新しい発見があります。食育といっても改まったものではなく、日常の生活のちょっとしたところで自然に親子で学べるもので十分なのです。他にも、日本にはない草花や野菜の名前を覚えたり、ザクロの種衣を一つずつ外して数を数えてみたり、オレンジを自分で絞って色水を作ってみたり、遊びから学んで食べることに興味を持つチャンスはたくさんあります。日本の食材が手に入るスーパーも便利ですが、せっかくなら市場を覗いてみて、タイの人たちの生活に触れてほしいと思います。
日本でこのセミナーを行ったときと同様に、いま子ども達にとってとても大切なのに不足している3つの「間」とは何か、皆さんに伺ってみました。これは空間、時間、仲間をさしますが、「時間」という答えがなかなか出てこないところがタイらしさかな、と思いました。この3つを頭においておくだけでも、タイで日本と変わらない子育てをするヒントになると思います。日本とバンコクでは子育ての環境が違いますが、親も子と同じようにその中でともに学ぶチャンスがあると捉えてほしいです。
子育ての環境の違いと言えば、タイでは日本よりも子どもに優しい国だということが挙げられます。ともすれば大人が子どもに何でもやってあげる。でもそれが当たり前になってしまって日本に帰国すると、文化の違いに戸惑うことになるでしょう。「優しい」とは、様々な側面、とらえ方のできる曖昧さを含んでいます。日本人としての子育てで大切にすべきことを、親がしっかりと意識することがとても大切になります。
親子での身近な遊びとして、昔ながらの遊びをおすすめしています。手遊びをインターネットで探してみる、そんなインターネットの使い方なら大賛成です。お母様の言葉で語りかけ、歌を歌ってあげるのもとても良いです。タイにはどんな歌があるのかな?そんな好奇心につながると、ここでの親子の時間がどんどん楽しく豊かになっていくことでしょう。
以上のような話を約2時間、レジュメを使いながら進めていきました。途中で日本のキンダークラスの子ども達の作品や年長さんの日記の写真をお見せし、作られた過程をお話ししたりもしました。いろいろな方が参加してくださり、1~2歳児を子育て中のお母様もたくさんお見えでした。参加者の中からは、「日本を離れて子育てをしていると、友達はできても子育て経験者からの話を聞く機会が乏しく、様々にある情報の選び方に不安がある」という声が聞かれました。今回のようなセミナーで、一方的に話を聞くだけではなく自分でも発言する気持ちでみんなで考えることが有効だと思います。慣れない海外生活には誰もが不安や悩みをもっているものです。一方で、日本で暮らすよりも子どもと一緒に過ごす時間は持ちやすいもの。ぜひ、特に3歳まではお手元でじっくりと、親子一緒になっていろいろなものに触れながら子育てをすることを忘れないでほしいと思います。バンコクでの暮らしを楽しみ、その良さを伝えるようにしていってくださいね。
みんなでお片付けをした後、希望者のみでアトリエの近くにあるレストランへランチに行き、お食事をしながら打ち解けた雰囲気でお話しすることができました。セミナーとは違い、今のご自身のことを話してくださり、バンコクに来て間もない方にとっては格好のコミュニケーションの場となりました。みなさん、バンコクからいつか日本へ帰ったり、また違う国へ行ったりします。子育てのなかでも、子どもがインターナショナルな学校へ通うとなれば、正しい日本語を使えるようになることに留意しなければならなくなるでしょう。そういったことも含めて、人任せにせず「日本人」としてのアイデンティティを忘れずに暮らしていくことを教えていってほしいとお伝えしました。
セミナー終了後にいただいたアンケートには次のような感想がありました。「具体的に子どもと一緒に取り組みたいと思うことがたくさんあった。」
「子どもの”今”を大切に子育てを楽しもうと思えるようになりました。」
「子育ての大事なポイントがわかり、すっきりしました。」
「子どもと遊ぶ時間、話をする、聴く準備を大切にしたいと思いました」
今回のセミナーを開催した意味があったと思われ、また次回も多くの方に子育てで大切なことをお伝えできるよう、日々意識を持ち準備して参りたいと思いました。