<バンコク> 0歳からのパターンブロック・インストラクター養成講座 2日目
2016年3月8日
2日目。実際に子ども達が学ぶ場に立ち合う、実践編の始まりです。この講座を受講された方の感想をいただいているので、それを交えながら様子をお伝えしたいと思います。
会場のTOY BOXに、5歳から小学校低学年までの子ども達が次々とやって来ます。子ども達が力をたっぷり発揮できるよう、スタッフが保護者の方に退出をお薦めしていきます。子どもは親が見ているところと見ていないところでは、力の発揮ぶりがまるで変わるそうです。大丈夫かな?なんて心配は無用。お父様お母様がいなくなったことを誰も気に留めないほど、子ども達はすでに、パターンブロックの時間にワクワクしている様子!このパターンブロック教室は、リピーターがとても多く、勉強する気で来ている子なんて一人もいないよう。こんなふうに子ども達自ら興味をもって、自然な形で学習できることはとてもすばらしく、それを叶えてくれるのがパターンブロックの力なのです。
この日は2月22日。ブロックを使って「2」を作るのですが、子ども達の手元には、いろんな2が出来上がります。それをさらに高く積み上げていきます。ビルに発展させる子どももいます。とても自由で個性を感じます。このあたりの活動を見ていた受講者は、「指導の中での先生の<返し>に注目してみると、どんな突拍子もない変化球も打ち返し、そのボールが飛んだ先を追いかけるうちに、子ども達はまたどんどん先へと興味の幅を広げ、パターンブロックの世界に引き込まれていくようです。子ども達の創造性やユニークな考え方を尊重し、それをより引き出せる<言葉がけ>を瞬時にしている先生。その言葉がけで、子ども達の目がダイアモンドみたいにきらきら輝く瞬間を、何度も目の当たりにしました。私にとって、それは初めて見る光景で、なんだか胸が熱くなる思いがしました。」とおっしゃっています。「言葉がけ」の大切さ、そのタイミングも含めて、受講者によく伝わったように思います。
「遊びながら学ぶ、学びながら遊ぶ」、遊びも学びも押し付けになっては意味がありません。第三者として、自分とは別の人格を「見守る」こと。インストラクターに必要なこの客観的な視点を、少しでも意識することで、ひいては家庭での子どもとの関係も変わってくるのかもしれません。
いつもよりも短い活動時間に「もう終わり?」と名残しそうな子ども達。また来たい!という子ども達の様子を、受講者は見ることができました。
さて、子ども達が帰った後は、再び講義に戻ります。実際にパターンブロックで遊びながら学ぶ子ども達を見たあと、「言葉がけ」「待つ」「手を出す」などのポイントについて、受講者が感じたことを含めてお話をしました。
その後は「空」というお題での共同作業になります。制限時間内に仕上げて、3分間でプレゼンするというもの。まず一人が「虹を作りましょうか」と提案すると、「いいですね、いいですね」となり、さっそくみんなで虹作り。黙々… 黙々…あ、あれ?会話がありません。子ども達は遊びの中で自然と声を掛け合って「青いブロックをとって!」とか、「僕はこれを作るよ」とか、自然にコミュニケーションが生まれていたのですが、大人は少し様子が違うようです。もう一つ様子が違うのが、パターンブロックの展開力で、大人はつい固まった考えになってしまうのか、子ども達のようにはいかないもの。その難しさを知ったからこそ、パターンブロックのクラスをどのように盛り上げていくのか、インストラクターとして大切なことをよく理解できたのではないでしょうか。それでもなんとか力を合わせ、変わりやすい山の空模様を表現した作品が完成! プレゼンは誰がするのかという段階になり、またもや静まり返る参加者一同でしたが、一人の方が、「では私が」と言ってくださいました。
さあ最後は筆記試験の時間です。「当たり前のことしか出していないので、難しいことはないですよ。でも東京での結果は散々でした」と言うと、笑いがおこったのも束の間。テスト用紙をめくったら、みなさん真剣な表情で取り組まれています。後である受講者からは「改めて問われると文字にならないことばかり。また、問題文すらしっかりと読めていなかったことに後から気付き、できればもうテストの結果は聞きたくありません」という感想が寄せられました。
確かに、ほとんどの受講者にとっては筆記試験を受けること自体が久しぶりだったことと思います。そのために、理解したことを具体的にテストで表すことについてはうまくできなかったのかもしれません。けれども、そのこととこの講座を受講されたことで得られたものというのはリンクするわけではないのです。先ほどの受講者は次のようにもおっしゃっています。
「この2日間、パターンブロックについて学ぶことは、子育てについて学ぶこととイコールでした。インストラクターとしての心得は、そのまま<子育ての心得>になると思います。焦らない、慌てない、諦めない、正解を勝手に決めて導かない。答えがないから面白い、答えがないから無限大。ただ与えるだけでは、このパターンブロックというツールの魅力は半分しか活きず、活かし方がわかって初めて、子どもの能力を無限に引き出して伸ばしていくことができるすばらしい学習材になるのだと思います。パターンブロックと先生に出会うまで、<ブロックはブロックであり、それ以上でも以下でもない>と思っていましたが、そうではありませんでした。正直、度肝を抜かれた気分です!今回、何の経験もない一保護者として、ただ娘にとっての良きインストラクターになれればと、まっさらな気持ちで受けましたが、大正解でした。忙しい日々で復習したりする時間は正直持てていませんが、それでも学んだことがたまに浮かんで、子育てを助けてくれます。パターンブロックを学んだのに、なんだか不思議です。シンプルなことを、丁寧に。小さなブロックをひとつひとつ並べるように、親子で日々の小さな一歩を重ねていきたいです。」
この方の言葉に、今回の講座の第一の目当てがすべて込められていると思います。インストラクターとしての活動は、子どものことを学ばずにはできません。子ども一人ひとりに寄り添い、適切な言葉をかけながらブロックの力を活用してこそ、子ども達の能力を引き出すことができるのです。インストラクターであることと同時に一人の大人として、あたたかな目線で子ども達を導いていってほしいと願っています。実際にこの講座の受講者のほとんどは子どものいる方々。まずはご自身のお子さんに実践してみたい、というまとめで今回の講座が終わりました。
日本でもバンコクでもこの講座ははじまったばかりです。多くの子ども達が遊びながら楽しく自信をもって学んでいけるように、パターンブロックと子ども達のことをよく理解したインストラクターが生まれるよう、尽力して参りたいと思っています。