<東北復興プロジェクト>東北キャンプ3日目
2017年5月7日
まだ夜も明けない朝4時00分、子ども達は起床時間をむかえました。昨日も夜まで盛りだくさんだったので、起きられるか心配していましたが、意外とすぐに目覚めることができました。なぜこんなに早起きか、今回の東北キャンプの中でも目玉イベントと期待される、”三陸鉄道”を貸し切って日の出を車窓から眺めるという特別な旅が敢行されるためです。
車に乗り込み、いざ釜石駅へ向かいます。釜石駅に到着し、朝早くから今日の特別な車両を運転してくださる車掌の吉田さんにご挨拶を済ませ、階段を駆け上がります。ホームにはおとなしい紫色に包まれるレトロな車両が待ち構えていました。
子ども達は心待ちにした様に、どんどんと車内に入ってゆきます。その車内は、西洋基調のシートと天井には桜の造花が装飾されており、シンプルながらに和洋折衷な豪華絢爛さを感じさせてくれる作りになっていました。吉田さんの大きな掛け声とともに、車両はゆっくりと釜石駅を離れてゆきます。発車すると、耳からも普段乗る電車とは違うということに気づきます。子ども達は、常に何かを発見する真新しい声をあげながら前後左右に広がる車窓から情景を眺めようと、車内をいっぱいに使って縦横無尽に歩き回ります。電車はまず釜石の街と防波堤横を通り、吉田さんが東日本大震災での惨劇と被害について「ここまで津波は押し寄せてきました」などと事細かに解説してくださいます。子ども達は車窓から眼前に望めるその現場に対して真剣な眼差しを向け、話を静聴していました。街を抜けると、自然の溢れる海岸沿いの景色に様変わりし、長いトンネルをいくつか通り過ぎると電車はゆっくりと停車しました。ふと左側に目を送ると、そこには群青色の波打つ海面とそこに上から覆いかぶさるように広がる地平線、そして力強い朝日が創り上げる三陸鉄道で一番と言われるにふさわしい絶景が広がっていました。車内からは大きな歓声とインスタントカメラの懐かしいシャッター音が聞こえました。
十分に眼に焼き付けるとまた列車は進みます。次に車両は”恋し浜駅”に停車しました。この駅は、景観だけでなく、独特な風習があります。それはホタテの貝殻に願い事を書き、駅内の紐に吊るすというものです。子ども達も昨晩のバーベキューで自分たちが食べたホタテの貝殻に各々自由に願いを書き、同じく紐に吊るしました。ここでは、さらに、土台の石造部分がハートに型どられた、この駅でしか見られないピンクのポストも発見しました。
再び滑り込むようにして車内に戻り、折り返し地点の駅まで、朝食をとったり、運転席横に設置されている擬似運転席で車掌さん気分になりながら向かいます。電車はゆっくりと折り返し地点の盛駅に着き、子ども達は元気よく外に飛び出します。周囲は長閑な田舎の住宅地で囲まれ、ホーム横の広場で子ども達全員で鬼ごっこをして10分ほど遊びました。30分ほど車内で揺られていると、長く暗いトンネルの中腹で列車は徐々に速度を落として停車しました。子ども達も「なんで止まったの」と声をあげます。すると吉田さんがマイクを持ち、「東日本大震災が発生した時、列車はこの位置で緊急停止をしました。本部との連絡もつかなくなり、運転手がトンネル内を歩いて近くの民家まで向かい、そこで今起きていることについて知りました。」と説明されました。ここでもまた、子ども達は真剣に耳を向けていました。その長く暗いトンネルを抜け、30分ほど自然の中を走ると再び始発駅の釜石駅に帰ってきました。これにて特別な三陸鉄道の旅は幕引きです。電車を降り、お世話になった列車を画用紙に描きます。特徴的な紫色の車体を上手に描き終え、最後に大変お世話になった吉田さんにサインを頂くとともにお礼を言います。寄り道として駅の横にある魚市場で家族へのお土産を調達します。大満足で手を海産物で一杯にしながら釜石駅を後にしました。
こすもす公園に戻ると、山菜を裏山に採りに行き、近くの清流、甲子川で水切りや足を水面に沈め、思う存分川遊びをしました。「お腹すいた」という声が各所からあがり、毎年恒例の山菜を使ったピザ作りが始まります。一人一人ピザ生地を練って、麺棒で伸ばし、ひょうたん型やハート型、長方形など、様々な形が出来上がっていました。そのオリジナルな生地の上にもまたオリジナルなソースと具材が散りばめられます。具材もユニークな個性派揃いで、チーズに鮭、トマトソースに甲子柿ソース、つくしやワラビなどここでしか味わえない様々な組み合わせのピザが次々に出来上がりました。出来上がった特製のピザは、こすもす公園特製の石窯でこんがりと焼き上げられます。どんどん焼きあがる自分のピザを母屋に運び、お皿に移してから勢いよく口に運んでいました。おかわりとして2枚目を焼く子が続出し、用意してくださった沢山のピザ生地は全て子ども達によって無くなりました。三陸鉄道に続き、大満足な釜石最後の昼食となりました。
昼食を終え、こすもす公園を出発するまでの時間は鬼ごっこやドロケイ、チーム対抗戦の大縄跳びなど、最後までこすもす公園を広くいっぱいに使って遊びました。そしてついに出発の時間が迫って来ました。最後にお世話になった藤井さんご夫妻、棟梁方、こすもす公園のお手伝いの皆様へ自作したお礼の歌と絵、そしてバッジが子ども達の手からプレゼントがされました。ご夫妻方の胸元に赤色のバッジが飾られます。
ついに出発する時間を迎え、ご夫妻方にお車を出していただき、2泊3日四六時中お世話になったこすもす公園を後にしました。順調に新花巻駅に到着し、新幹線の出発時間まで、ここでも自生するつくしとスギナ狩りが始まりました。何処であろうとも時間を余すことなく使います。新幹線の時間が迫ってくると、今回の東北キャンプで常にお世話になった藤井ご夫妻と、子ども達のために急ピッチでピノキオ滑り台を作ってくださった棟梁方に最後のお礼とお別れをし、山の幸を海の幸を両手に抱え、駅構内へ向かいました。帰りの新幹線では、今日一日を振り返りながら、日記を書きます。書きたいことが多くどこを抜粋しようか頭を抱えている子も多くいました。行きよりも時間の経過を早く感じ、あっという間にお母様方の待つ東京駅に到着しました。こうして特別企画”東北キャンプ”が無事閉幕しました。
今回のキャンプでは自分も子ども達同様学ぶことが多く、帰って来て自宅の庭に山菜(スギナ)が生えている事を知りました。子ども達は若いうちからこのように図鑑やネット上ではなく実際に手にとって学び、徐々に視界を広げられ非常に恵まれた環境にいるのだと再確認しました。